座談会 1 2050年 ありたい姿の実現へ 持続可能で快適な未来づくりを

  • 竹林 潔 執行役員 経営戦略本部長代理
  • 殿最 浩司 取締役 経営戦略本部長
  • 石濱 賢二 常務取締役 技術本部長
  • 山林 佳弘 代表取締役社長
  • 前川 太 取締役 国内営業本部長
  • 渡辺 俊一 取締役 総務本部長
  • 竹中 秀夫 取締役 国際事業本部長

1 建設コンサルタントを取り巻く諸状況と
ニュージェックの現状について

竹林
1963年にニュージェックが設立されて、今年で60年の節目を迎えました。当社の現状と、建設コンサルタントを取り巻く諸状況などを踏まえつつ、長期的視点に立って、30年後の2050年を見据え、当社の在りたい姿について、役員の皆様にそれぞれの考えや思いを語っていただきます。
まず、当社の在りたい姿の象徴ともいえる、NJビジョン2050「共に拡げ高め合い、“自然と”生きられる社会を世界に。」について、ビジョン策定の背景と目的、ビジョン実現に向けて社員が果たすべき役割と行動などについて、殿最本部長からお願いします。
殿最
NJビジョン2050は、2020年に策定しました。そのビジョンと関連する理念体系を2021年に策定しております。これまで慣れ親しんできました企業コンセプト「自然と人を技術で結ぶ」は、32年前の1991に、社名を現在のニュージェックに変更するとともに生まれました。先輩たちはこのフレーズに「自然と人を技術を通してより豊かな関係づくりを真摯に見つめ続ける」という思いを込めました。
NJビジョン2050は、ニュージェックが未来のある時点において、社会における在りたい姿を描いたものです。
「“自然と”生きられる社会」は、ニュージェックの使命に「持続可能で快適な未来を創る」とあり、それは、人類を運んできた「自然と共に」生きることです。誰もがお互いを尊重し、多様性を認める「自然体で」生きることができる社会だと私たちは考えました。つまり、使命を果たし続けた結果、私たちが実現するのは「“自然と”生きられる社会」です。“自然と”という言葉の中には「自然と共に」「自然体で」という意味合いを兼ねています。
次に、「共に拡げ高め合い」ですが、私たちが技術を高め、様々な活動に取り組んできた結果として、安全安心な社会基盤整備で社会に貢献する。その実現のために、私たちニュージェックができること、そう在りたいという願いを込めました。それは私たちのみならず、共創パートナーと業容や活動領域・視野を広げ、技術や企業価値を高めることも意味しています。
最後に「世界に」という意味ですが、2050年には私たちが世界で活躍し、「“自然と”生きられる社会」もまた世界へ広がっている。そんな姿を目指しています。以上がNJビジョンに込めた思いです。
また、理念体系ですが、使命、経営理念、行動指針からなっております。経営理念、情熱と誠意をもって「信用と信頼の輪」を拡げ、世の中の幸せを希求する。それから行動指針、利他の精神・共に創る・当事者意識・プロ意識・自己研鑽・変化を楽しむ・風通しを良くする・コンプライアンス。経営理念を実現するために、この8つを常に心がけて行動指針を作成しております。
竹林
NJビジョン2050は、グローバルな視点から「“自然と”生きられる社会」が世界に広がってほしいという思いを込めたという説明をいただきました。この「世界に」というワード、より国際的な企業を目指していく思いが込められています。この点について竹中本部長、お願いします。
竹中
新興国や発展途上国は、自然がそもそもそこに住む人々の生活の糧になっています。自然と生きられる社会という意味では、先進国よりもむしろ重要度が高いと思われます。国際事業としてインフラストラクチャープロジェクトを実施するとき、自然だけでなく、社会に対してもインパクトをどれだけ減少させるかが重要な課題だと考えています。それぞれの国の法律や基準に加え、プロジェクトに資金を供給するJICAや国際的な開発銀行などは、環境や社会を守るためのスタンダードを持っています。我々は、そのスタンダードの趣旨をよく理解した上で、きちんと反映したり、運用できたりする国際的なプロフェッショナルを育てていく必要があると考えています。プロジェクトが完成して終わりではなく、その後の運用・供用期間も含め、自然と社会が維持できるような形にもっていくフォローが肝要だと思います。
あわせて、当社が積み上げてきた環境配慮型の設計を国際的にどう展開していくかも考える必要があります。その一例がダムです。関西電力の旭ダムと出し平ダムで、洪水バイパスあるいは排砂のシステムを作り、濁水対策と堆砂対策として有効な機能を発揮しています。コストが高いため、新興国や発展途上国で展開するのは簡単ではないですが、経済と技術が発展するに従い、やがて各国でもニーズがでてくるでしょう。
竹林
2人の話を踏まえ、当社としてこれから歩むべき道と社員への期待などについて山林社長にお願いします。
山林
2か月前の社長就任時、企業進化について挑戦していこうと申し上げました。目指すところは企業使命を胸に、永続的に発展を続ける規律のある企業に成長することです。具体的には、まず、情熱をもって取り組み、挑戦し続けること。二つ目はよい商品を提供する不断の努力を規律高く繰り返し、エンジニアリングの質を徹底的に高めていくこと。三つ目は業務プロセスから無駄を徹底的に省き、効率的にやっていくということ。四つ目が外部環境の変化を機敏に察知し、迅速に適応することです。
近年、気候変動で災害が激甚化しています。そういったものに対処できるものを技術的に提供していく必要がある一方、少子高齢化により、少数の人間で仕事を効率的に進めるためにも、DXや技術開発などに挑戦していく必要があります。既存のものには効率的に、新しいものにはより大胆に、情熱を持ってできるもの、一流になれるもの、一定規模の経済規模があるものに、チャレンジしていく必要があります。これを成功していくためには、社員の方々に安心して挑戦できる環境を提供し、要所でしっかりと幹部が進捗を把握し正しく導いていくことが重要だと考えています。
  • 山林 佳弘 代表取締役社長

2 “自然“と生きられる社会実現への取り組み

竹林
ここで、この自然と生きられる社会実現への取り組みについて深堀りしてみたいと思います。まず、地球規模の目標「カーボンニュートラル」に対する当社の取り組みについて、前川本部長にお願いします。
前川
自然との共生というテーマは、最近のキーワードであるグリーンインフラ、カーボンニュートラルが挙げられます。これらを総称すると、グリーントランスフォーメーション(GX)になります。いわゆるイノベーションに対する取り組みが必要になってくると考えています。例えば、再生可能エネルギーの立地は、風光明媚なところで立地されることが多い気がしています。それは、周辺環境に調和させて、地域住民をはじめとした多様なステークホルダーが満足して、自然も含んだ魅力あるインフラとして整備していくかが重要な視点になってくると考えています。また、インフラ整備を行う場合に、環境負荷を最小限にする省エネを必ず念頭に置き、建設コンサルタントの役割を考えていくことも重要です。インフラ整備を計画する場合に、計画主体である公共と、インフラを利用する地域住民をつなぎ合わせて共助に導くことも我々の大きな役割だと思っています。豊かな自然を大切に扱い、カーボンニュートラルを達成するような技術力。これは、会社経営でいえばESG経営につながるものだと思っています。それが会社の価値の向上に寄与することになります。
竹林
このようなGXや自然との共生というものを実現するキーとなるのが、当社の従業員です。そういう意味でも働き方が極めて重要になります。従業員の働き方、あるいはダイバーシティに関して渡辺本部長にお願いします。
渡辺
働き方改革、ダイバーシティには会社を挙げて取り組んでいます。個々人の価値観も多様化しています。当社は現在、約750人の従業員がいますが、ここ10年で100人程度増加しました。2030年度に向けて900名に増やす計画もあります。最近の採用傾向は、新卒採用のうち約3割が女性です。10年ぐらい前は10%台で、人数も今の半分よりも少ない状態でした。新卒以外のキャリア採用も年齢的に不足している世代を中心に積極的に行っています。これも昔は女性はゼロでしたが、今は3割程度入っていただき、力を発揮してもらっています。
こういった背景からも育児休職の取得が増加しています。女性の取得率は100%で、配偶者が出産した男性の育児休暇も昨年度で66%の方が取得しています。社員が働きやすいように、会社としても制度を作り、職場がバックアップしていくような土壌づくりを進めたいですね。それがリクルートにもつながりますし、社員が生き生き働ける魅力ある会社になっていくと思います。
また、世の中の進展に合わせ、一定の点でとどまることなく、常にキャッチアップしていく必要があると思っています。リモートワークや時差出勤、時間有給休暇もその一つです。もっと先を行く企業も出てくると思いますので、遅れることがないように、社会の情勢を考慮し、社員の声を聞きながら、自然体でしっかりと働くことができ、社員が力をフルに発揮できるような環境づくりに努めていきたいと思っています。
  • 前川 太 取締役 国内営業本部長

3 技術の継承、人材育成、
若者へのメッセージ

竹林
ビジョンを実現するためには技術の継承や人材育成をどう進めていくか、若年層をどう活用していくかが、ビジョン実現のための重要なファクターになってきます。当社における人材育成の方向性について、渡辺本部長からお話をいただきます。
渡辺
当社では現在、新卒採用を積極的に進めています。一方でキャリア採用にも力を入れ、多くの方に活躍していただき、活気ある職場を形成して頂いています。
それと資格の取得ですね。当社の事業活動上必要となる資格の取得者を一層増やすためのインセンティブを設けており、祝い金や手当などの見直しを強化しています。勉強しやすい環境整備も重要です。勤務時間中の資格取得に関しても一定条件で認めています。早期に資格を取得することで、今後のキャリアアップに繋がると考えています。
教育に関しては、階層別の研修環境を整えています。新入社員研修には3カ月かけており、2年目、3年目、あるいは管理職になるタイミングでも研修を行っています。研修はスキルを身につけたり、マインドチェンジしたりする意味合いがある一方、同世代の同じような悩みを持つメンバーと顔を合わせるということで、人のつながりが深まることも期待できます。
部門間を含めた人材の交流も進めたいですね。同じ部署で同じ仕事を続けることで、技術を極めていくことも確かに大切ですが、違う職場からの考え方などを取り入れることで、新しい発想も生まれるのではないでしょうか。
竹林
当社は技術の会社であることから、キャッチコピーにある「自然と人を技術で結ぶ」のとおり、個々の技術者が培ってきたノウハウや技術、経験をいかに次世代へつないでいくかが大切です。技術継承の重要性と時代を担う若年層へのメッセージを石濱本部長からお願いします。
石濱
建設コンサルタントの仕事は、学校で学ぶ専門書やさまざまな技術基準を使うに書いてあることだけでは到底できません。経験に立脚した部分が大切です。例えば、ある設計計算をやろうとしたときに、個々の条件設定や計算で得た結果の評価の仕方は、技術基準で細かく決まっていません。つまり技術者の経験が重要です。60年の歴史の中で積み上げてきた技術やノウハウが当社の財産であり、確実に後輩に引き継いでいくことが重要です。技術継承で大事なのは、先輩と若手が一つのチームになって一緒に仕事をしていくことです。先輩社員が持っている文字になってない「暗黙知」と言われるノウハウをについて業務を通して積極的に伝えることが大切です。一子相伝にならないためにも、「暗黙知」を「形式知」の形という文字に変えて、全社で蓄積していくような仕組みが必要で、当社の財産になると思います。
若者へのメッセージとしては、一つは「失敗を恐れずに何にでもチャレンジしてほしい」ということです。失敗は若いうちしかできません。失敗することから学ぶことがたくさんありますから、失敗を恐れず、いろいろと経験しないともったいないと思いますね。
もう一つは、「仕事には誠実に一生懸命取り組んでほしい」ということです思います。若いときにする雑務も含め無駄な仕事は一切ありません。つまらない単純作業に見えても、それはいつか必ずどこかに役に立ちっています。その時々は苦しくても、一生懸命取り組めば、必ずゴールにたどり着くという気持ちでやっていただきたいと思います。
  • 渡辺 俊一 取締役 総務本部長

4 建設DX、BIM/CIMなどの新しい分野
新技術の取り組み

竹林
二人の話を聞いて、会社として蓄積してきた貴重な技術、経験ノウハウをいかに継承していくか、また、これを支えるベースとしての人材育成の重要性を改めて痛感しました。
NJビジョン2050の実現には、建設DX、BIM/CIMなどの新分野、新技術に対する積極的な取り組みも欠かせません。石濱本部長に新分野、新技術に関する取り組みや方向性などをお願いします。
石濱
建設分野の仕事は保守的なんですね。発注者が決めた基準やルールがしっかりあって、これに基づいて仕事をしなければなりません。これを逸脱すると、検査不合格とか契約不履行というペナルティーをもらいます。設計のやり方も昔からのやり方を踏襲してきてますから、今の時代で見ると、なんでこんな無駄な手順や作業があるのか疑問に感じることがあるでしょう。ただ、今年からBIM/CIMが本格導入されて、地形や構造物を三次元で扱うことが基本になっていきます。今後そのBIM/CIMの技術が発展していくと、手間のかかる設計計算や図面作成、数量計算が自動化でき、いろいろな比較検討や最適設計が簡単にできるようになり、生産性が大きく向上します。
当社では、BIM/CIMに対する新しい取り組みを始めています。現在、今後の当社のBIM/CIMのロードマップを作っています。年を取っているから、管理職だからっていうのは関係なく、すべての技術者に立場に応じたレベルのBIM/CIM技術を習得してもらいたい。使えなくても中身が分かればいいのです。BIM/CIMをベース技術として社会に役立つ新技術はどんどん導入し、必要な新技術があれば、その開発に積極的に取り組んでいきたいですね。
竹林
コンサルタントの活動領域が広がる中で、新分野に関する取組としての営業戦略などについて、前川本部長からお願いします。
前川
我々の業務は多様化し、日に日に進化しています。DXやBIM/CIMは、事業促進PPP(ママ)、PM・CM、PPP/PFI、アセットマネジメントといったマネジメント的な業務にも広がっていくと思います。こうした業務は技術力だけではなくて、法務や労務、ファイナンスなどに幅広い知見が必要です。
今後、当社として力を入れていきたのは、PPP/PFIです。建設コンサルタント市場は1兆円規模であり、その約1割程度占めるようになるのではないでしょうか。しかしながら、通常のコンサルタント業務よりもリスクが大きいため、法務や労務、ファイナンス分野を充実していく必要があると考えています。例えば、専門家を招聘したり、アドバイスをいただけるような団体と提携したりするなどの対応策が重要ではないでしょうか。
特にPPP/PFI事業は、長期的に収入が見込める事業で、特別目的会社(SPC)の構成会社になれば、利益も期待できます。コンサルタント業界にとって、さらに充実するべき事業形態だと考えています。
アセットマネジメントについては、マネジメント面をしっかりと考えていくことが重要だと思います。着目しているのは、近隣の市町村を集めたエリアマネジメントという概念です。合理化と効率化が図れる上、長期的にマネジメントが行える利点があります。当社にもアセットマネージャー資格を持たれている方がいますが、国交省の認証の資格になっていないのです。こういったことも国に強く訴えていきたいですね。そういった方を中心に提案力を磨いていくことが必要だと思います。
竹林
NJビジョン2050の実現には、業務プロセスそのものを変革して、生産性の抜本的向上を図るDXの取り組みが不可欠です。DXに対するニーズが高まる中で、当社のDXの取り組みを殿最本部長からご紹介ください。
殿最
当社は、2022年にDX推進戦略を策定しました。顧客DX(外的DX)、社内DX(内的DX)の二本柱でDXを推進します。顧客DXは、コンサルタント領域における競争力のある提案と、顧客にとって価値のある商品の提供を目指しています。社内DXは、透明性が高く、多様性に優れ、創造性豊かで効率の高い企業となるべく組織文化の変革に取り組むものを目指しています。
そこで、DX推進を3段階に分けて、在るべき姿とDXプロジェクト推進イメージを設定しています。
第1段階は、今年2023年までにデジタル化、データ連携の社内展開を目指しています。DXのプロジェクト推進イメージは、DX戦略が明確に示され、経営判断で商品化、競争的提案に積極的に資源が投下されている状況を目指しています。その成果として、経産省が行っているDX認定企業の認定を今年中に受けるべく、申請準備を進めています。こういった取り組みによって、「オソレル」という浸水を可視化するシミュレーターやリアルタイム水圧データを利用した上水道の漏水検知システムといったものの商品化を進められるような段階になってきています。
第2段階は、データ活用が進み、様々なサービスや機能が充実している段階を2025年までに目指しています。プロジェクトの推進イメージは、社内のコンサルティングが進み継続的なDXプロジェクトが進行している状況を考えています。
第3段階は、2026年から2030年です。自発的にさらなる価値創造活動が進展している状態で、社内全体でDXのマインドが広がって、グループ横断的にプロジェクトが自律的に進行しているような状況をイメージしています。
  • 石濱 賢二 常務取締役 技術本部長
  • 殿最 浩司 取締役 経営戦略本部長

5 国際化への対応

竹林
次に国際化への対応について深堀りをさせていただきます。竹中本部長から当社における海外進出の歴史、現在の状況、そして海外のインフラ整備に対する日本の技術のニーズや課題などについて話題提供をお願いします。
竹中
当社は設立のときから国際事業を展開するということでスタートしました。実際には、設立3年後の1966年、韓国のチョンピンという水力発電所の設計施工監理を受託したのが最初の海外案件です。その後、電力分野での技術的な蓄積、経験を生かし、インドネシアでタンジュンプリオク火力、東部ジャワ送配電などのプロジェクトを足掛かりに、1970年代末から80年にかけて、サグリン、チラタ、バカルといった国家事業規模のプロジェクトに携わる機会に恵まれました。こういった大規模なプロジェクトでの蓄積により国際事業の礎ができました。
今、インドネシア国で初めての揚水発電所となるアッパーチソカン揚水発電所の建設が本格着工しようとしています。多くのメンバーが現地に赴き、このプロジェクトを完遂するという使命でもって、頑張っていただいています。電力流通分野では、カンボジアやパプア、パキスタンなどの国で、円借款の送配電工事の設計施工監理を行っています。そういった、電力流通あるいは発電の分野での事業形成は東南アジアを主軸としつつも、中央アジア、アフリカ、中米といった国々でも展開しています。
昨年からは海外研修制度を設けました。昨年度5名、今年度も5名、それぞれアッパーチソカンで現地での研修を行っています。昨年も1名、今年も2名の女性が参加しております。1年目の研修生の帰国時の姿を見たときは、非常にたくましくなって帰ってきたなという感慨が沸き起こりました。貴重な経験をされたと思っています。若い世代が次の国際の舞台に立っていただけるように期待しています。
今後の国際事業を考える上で課題が3点あると考えています。一つ目は、コンサルタントサービスのレベル向上が必要だと思います。日本のエンジニアが海外で報酬をもらって仕事をしていくためには、質の高いサービス提供が重要です。プロジェクト全体をコマーシャルや契約を含めてマネジメントしていくような業務に軸足を移していくことが必要だと考えています。
2点目は、今後を考えると、民間の投資案件も含めたノン・ODA案件に対して、手を広げていく必要があると考えています。PPP/PFIは国内だけではなく、海外でもあり得る話だと思いますし、すでにIPPとして発電分野では民間の投資が行われているのが実情です。
3つ目は、電力主軸の国際事業から裾野をどう広げていけるかです。新たな領域に入っていくためには、独自なものを持つ必要があると思っています。GXやDXといったキーワードで特色を出していきたいですね。
竹林
創業以来60年間にわたる取り組みや現在のビッグプロジェクト、若手育成方策などなど、目下の課題などについても触れていただきました。諸先輩方の功績の偉大さ、若手がたくましく帰ってくるなど心強い限りの話が印象的でした。
これらを踏まえ、当社における今後の海外展開の方向性について、山林社長にお願いします。
山林
竹中取締役が話した質の向上やノン・ODA、電力主軸からいろんな分野にチャレンジしていくことには同感です。現在、総収入のうちの占める海外の割合は15%弱であり、もう少し伸ばしていきたい思いがあります。そのためには多角化なチャレンジが避けて通れないと考えております。東南アジアでのJICAのODA案件を数多く手掛けてきましたが、以前は、日本で既に実現されている技術を、時差で発展途上国に進出する、即ち日本が技術的優位性を保った上で東南アジアなどに進出してきました。その後、東南アジアは一人当たりのGDPが伸び、JICAを卒業するようになってきました。電力分野ではIPPが出てきたため、ニュージェックの仕事もODA案件は1980年頃にピークを迎えています。従い、昨今では、世界銀行融資のプロジェクトや最新の技術を活用した揚水発電などに取り組んでいます。今後、JICA案件の獲得のためには、アフリカや南米、中南米といった発展途上国で戦略性を持って取り組んでいく必要が不可欠であると考えています。
非JICA案件については、既に技術的に発展段階にある国が対象であり、日本人だけで仕事をするスタイルから、その国の国民と一緒になって最先端の技術を導入するスタイルに変化していくことが必要です。むしろ少数の日本人と多くの現地のスタッフとのチームワークで物事を進める姿勢が大事です。現地事務所も、今は日本人が主体ですが、日本人の数倍の地元エンジニアを雇用して、業容を拡大する戦略が必要です。
チャレンジングな目標ですが、欧米のコンサルタントはすでに実現しており、世界に伍するために、臆せず経営層として実現していきたいと思っています。
  • 竹中 秀夫 取締役 国際事業本部長

6 ニュージェックの将来展望

竹林
これまで、将来に向けて当社が目指すべき方向性やその実現に向けた課題などについて、様々な視点から多岐にわたる話をいただきました。
座談会の締めくくりといたしまして、ニュージェックの将来展望について、それぞれのお立場から自由に御発言をいただきたいと思います。
渡辺
この会社の人たちは、仕事を好きな方が多いと感じています。それは、その人たちが自信を持っていたり、お客様に喜ばれたりすることに起因すると感じています。本当にいい会社だと思っています。これがいつまでも続いてほしいですし、さらにみんなが誇りを持てるような会社になることを願っています。創立100年の頃って40年後ですよね。時代が変わり、オフィスという概念がなくなって、電車通勤の様子も変わっているかも知れません。劇的な変化があったとしても、社員同士のつながりや一人一人のマインド、責任感をつないでいってほしいですし、私自身もそれを意識しながら先を見て仕事していきたいと思っています。
竹中
創立100年を迎えるときには、会社の中で国際事業が経営を支えるひとつの柱となれるような規模になってほしいし、ならなきゃいけないと考えています。世界で、欧米系のコンサルタントと普通に競争できるようなプロフェッショナルが、当社に数多くいるような状況になることを期待しています。日本人だけではなくて、いろんな国々から来た社員が働いている事業本部になっていることを想像していますし、その想像が実現するように努力していきたいと思います。
殿最
行動指針8項目のうち、私は「変化を楽しむ」を重要視したいと考えています。世の中はものすごいスピードで変化しています。ニュージェック社員は、その変化を恐れるのではなく、楽しめる人になってほしいですね。我々経営者もこの変化を十分理解し、積極的に新たな教育システムなどを、積極的に導入する必要があると考えています。一方で、いくらすごいスピードで変化しても、建設コンサルタントに必要な基礎技術、土木の分野でいうと構造力学、土質力学および水理学の基礎学力は、不変だと思っています。2020年に人財材育成センターを発足させましたが、基礎技術をしっかり身につけた上で、変化を楽しめる人材を育てていくことが我々の責務だと考えています。
前川
振り返ると、今世紀に入る前までは、当社は最先端の技術力を保有していたと考えています。関西電力から研究テーマをいただいて仕事をしていたことも含め、同業他社ができないような技術がありました。しかし、一般的に通り一遍的な技術で通用していた時代は終わり、仕様設計から性能設計への変革もあり、他社も先端的な技術に着目し、取り組める、また、他社の技術を取り入れるようになってきました。これからは我々の技術力をどのように磨いていくか、研究開発もしっかり行い、業界をリードするような会社になっていくことが100年後もいい会社として残れるのではないかと強く感じています。進化し続ける会社であってほしいと願っています。
石濱
当社は関西を基盤とし、関西電力グループの会社という他の建設コンサルタントとは少し違う独自の歩みをしてきたと思っています。当社の誇れる部分は、「技術と仲間をすごく大事にするし、自由な社風のいい会社」だと思っています。その良さを継承していただきたい。業界順位をあげることも大切ですが、業界の中でぴかっと光るものを持つ唯一無二の会社でありたいですね。もう一つは、お客さんに信頼される技術と品質が提供できる品質第一の会社であってほしい。それが社会から選ばれ、ニュージェックに仕事頼みたい、ニュージェックに入社したいと思ってもらえる会社になっていくのではないでしょうか。
竹林
最後に山林社長、お願いします。
山林
社員の皆様にニュージェックで働いて良かったと思っていただけるように、社長として、企業の進化に全力を尽くしたいと思います。そのような企業は、社内の風通しが良く、挑戦する気風があり、発展し続けている会社と思います。NJビジョン2050では、「共に拡げ高め合い」の姿勢がこれに該当すると思います。今後ますます社会の多様性が尊重され、個々人の目標や嗜好も多様化してくると思います。そういった多様性を企業として積極的に受け入れながら、社会のニーズの変化に敏感であり続けたいと思います。これまで諸先輩が守って来られた勤勉で包容力のある良い社風を維持しつつ、新たな技術開発に積極果敢に挑戦し、社会に貢献し続けるニュージェックでありたいと思います。
竹林
座談会は、長期的視点に立って、約30年後の2050年を見据えて、当社のありたい姿について様々な視点からフランクに話を伺える大変よい機会になったと思います。創業以来60年間その時々の社会と技術の変化に臨機応変に対応し、安全・安心で持続可能な社会資本整備の実現に微力ながら全力を尽くして貢献してきました。過去60年間も、将来に向けても、当社として、自然と人を技術で結び、持続可能で快適な未来づくりに貢献するという使命を果たしていくことに変わりはありません。当社がいつの時代もこの変わらぬ使命を全うし、社会と共に歩み、常に進化を遂げて成長し、国内外の全てのステークホルダーから信頼され、持続的発展を遂げていける企業であり続けられることを願いまして、座談会を終了します。ありがとうございました。
  • 竹林 潔 執行役員 経営戦略本部長代理

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